山の恵み とちの実
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縄文時代よりの食文化

ほっぺたが落っこちるほどうめぇんだ
とちの実

栃とは?

栃の実について


栃の木になる「栃の実」は、厚い果皮の中にある種子のことで、その果皮の中には1~2個の栃の実が入っています。 夏の終わりから秋になると、黄緑色から茶色に熟し、大きさが5~6cmほどに成長した厚い果皮が三裂し、中の種子 (栃の実)が顔を出します。この栃の実1個のサイズは約3~4cmです。木が高くなる栃は、直接、実を採ることが難しいので、 果皮ごと落ちてきたものの中から実を採集するのが一般的です。
この栃の実は、見た目が栗と非常によく似ており、栗のとがっている部分をなくし丸みをつけたような形で、色を濃くし光沢がある、 コロコロとした愛嬌のある実です。

果皮に包まれる栃の実

見た目は栗そっくりですが味はまったく違い、茹でてもすぐには食べられません。
栃の実はサポニンやアロイン、タンニン(ポリフェノールの一種)を多く含み、そのまま 食すと非常に強いあくがあり、あく抜き作業をしないと渋みや苦みで舌がビリビリとな り、口にすることができないのです。
トチノキ属が分布する世界各地の中でも、あく抜きをして実を食す文化を持つのは日本だ けです。栃の実のあく抜き作業は、高度な技術と根気が必要で、あく抜きをしなければな らない食材の中でも非常に手間がかかります。
主に街路樹として使用している他国では、薬用や漢方として栃の実を活用しているようで す。

また、栃の実の食文化は縄文時代から続いており、複式炉(灰の貯蔵施設をもつ炉)の遺 跡からも栃の実が発見され、その時代から灰によるあく抜きがおこなわれていたといわれ ています。何年もの長期保存もきき、貴重なデンプン源で、栄養価にも富んだ栃の実は、 保存食としても大変重宝されてきました。

栃の木について

栃の木 高さが20~30m、幹の太さも1mを越えるものも少なくない、日本にのみ自生する高木の落葉広葉樹です。 日本に自生する樹木の中では大木になるものの一つです。

「栃の木」が属するトチノキ科トチノキ属には24種の仲間があり、トチノキ属はアジアやヨーロッパ、インド、 北アメリカなど北半球に広く分布し、主に街路樹などに使われ世界中で慣れ親しまれています。
もっとも有名な通りとしても知られている、フランスの首都パリにある「シャンゼリゼ通り」の街路樹は、 日本のトチノキの近縁種である「セイヨウトチノキ(マロニエ)」の並木道になっています。
また日本でも、霞が関の桜田通りや岩手県庁前・栃木県庁前などが、街路樹としてトチノキ並木が続いています。 トチノキは街路樹10樹種にも選ばれ、栃の木は全国で街路樹として植栽されてきました。

多くの小学校の国語の教科書や、本屋さんにも並ぶ1971年に発行されて以来、長年愛 されている絵本“モチモチの木”。この本に出てくる登場人物である“豆太”と“じさま”が、 お互いを想う気持ち、臆病な豆太が勇気を出してじさまを助ける場面がとても感動的で、さ らにはこのストーリーの場面を繊細に感じることができる、色鮮やかで綺麗な切り絵が とても印象的な絵本です。この本の題名になり、文中にも出てくる「モチモチの木」と豆 太が名付けて呼んでいるこの木が「栃の木」なのです。この木から落ちるピカピカ光る実 を粉にして餅に混ぜるとホッペタがおっこちるほどうまいというこのフレーズは、とちも ちのことを言っているのです。

栃の花について

栃の花は5月~6月の初夏に、大型で遠くからでも綺麗な花を確認できる白く赤みがかった15~25cmほどの円錐状の花を、 枝先の葉の間から咲かせます。
この花は、約1~2cmの小花が約100個集まり円錐状に形成しているもので、一つの花序には雄花と両性花が混在しています。 その大多数が雄花で、両性花は花穂の下部に位置しています。
一つの小花は、白色で基部が薄紅色の花弁が4枚、雄しべが7本長く突き出ており、雄花が多く集まっているため華やかさがあります。 「贅沢・豪奢(非常にぜいたくで派手なこと)」という花言葉をもっているほどです。両性花はそこに退化した雌しべがあります。
栃の花
花は甘い香りがあり、良質な蜜を持ち多く分泌するので、ミツバチが好んで吸蜜に訪れます。
花の時期が終わると雄花は地面に落ち、雌しべを持つ両性花から栃の実の元となる果実が現れます。

栃の葉について

栃の葉 非常に大きく最大50cmになるものもある、対生した約5~7枚の木葉を手のひらのように広げた形の、掌状複葉が特徴です。 葉は枝先に集まり、葉の縁は波状でギザギザの切れ込み(鋸歯)があります。葉脈ははっきりと確認でき、直線的にほぼ平行に並びます。 葉は透けるような黄緑色~濃い緑色がとても綺麗で、裏面は表面よりも薄い緑色です。
夏季は干ばつやうどんこ病等によって葉枯れし、落葉しやすいのが欠点ですが、比較的育ちやすい木です。 秋になると、緑色から黄色に変化し、冬には落葉して粘液に覆われた冬芽で冬を越します。

栃の一年

年表

栃の花 開花 栃の実つきはじめ 栃の実採集
開花
栃の実つきはじめ
栃の実採取

栃の食用が盛んな鶴岡

山形県鶴岡市は、栃餅など“栃の実”を使ったお菓子が盛んに作られ食されています。昔は 各家庭でお正月などのめでたい日に栃餅を搗いたりしました。現在はそのような家庭も少 なくなりましたが、栃は今日まで鶴岡市民に馴染み深いものとしてかかわってきていま す。
鶴岡の中でも特に自然がたくさんある「朝日地区」には、栃の木がたくさん植生してお り、栃との関係も深い地域です。

*山形県鶴岡市朝日地区とは
山形県鶴岡市朝日地区

山々の間を流れる大鳥川

日本海に面する山形県庄内地方の最南端に位置する朝日村という地域でしたが、 平成17年に鶴岡市とその周りの藤島町、羽黒町、櫛引町、温海町と合併し鶴岡市となりました。

大部分が山地で占められており、庄内地方を流れ日本海にそそぐ川「赤川」の上流部「大鳥川」や「梵字川」 が流れる、自然豊かな地域です。また、大鳥池という巨大怪魚タキタロウが生息しているのではと有名になった池があります。
弊社で使用している栃の実は、この朝日地区で栃農家の菅原さんご夫婦があく抜きをしたものです。

朝日地区の栃の木が植生しているところは、自然豊かな山がゆえに急な斜面、また熊が出る可能性があり、 採集するには非常に危険な環境にあります。そのため、昔から栃の実と密接してきたこの地域でも、 たくさんいた栃農家は少なくなり、現在は片手で数えるほどしかいないのが現状です。 あとを継ぐ若い人もほとんどいません。
栃の実のあく抜きは、あくを抜かなければ口にすることができない食材の中でも非常に難しく、 時間がかかります。技術や根気が必要なあく抜き作業をしているご夫婦は、栃の実の達人です。
先人から受け継がれた知恵、道具を駆使し、いかに栃の実の風味を逃さずあく抜きをするか、 日々研究し取り組んでいる、大福城にとっても、鶴岡の文化を守るためにも、大変貴重な存在なのです。
山形県鶴岡市朝日地区

庄内地方に見つかった遺跡

山形県遊佐町 栃の実は縄文時代から愛されてきた実です。
ここ山形県庄内地方でも、縄文時代の遺跡から多数出土されたことから、栃の実は古くから雑木が豊かで清流が流れる地域で、 貴重な食糧資源であったと考えられています。

山形県遊佐町吹浦では、1998年に「小山崎遺跡」が発掘されました。
この遺跡は、縄文時代早期(約6500年前)~後期(約2700年前) の約3800年間に渡り繰り広げられてきたものです。
小山崎遺跡は日本海に近く、また山形県と秋田県にまたがる鳥海山の麓にあります。 鳥海山から流れる冷たい伏流水と粘土層によって温度が一定に保たれているため、天然の冷蔵庫のような状態になっています。

このような小山崎遺跡の特殊な条件が揃っていることにより、通常の有機物は土中で腐ってしまい残らないものを、栃・くるみなどの木の実や、 シカ・イノシシなどの食材、建築部材、漆器等の木製品など、青森県の有名な遺跡「山内丸山遺跡」にも匹敵するといわれるくらい、 それぞれ良好に残っていたのです。
さらに発掘をすすめていくと、敷石列が発見され、敷石組みに人為的にはられた粘土層が確認されました。 これは湧水を導く施設であり、作業するときにはこの水流を使い、栃の実の「あく抜き作業」や「木製品用木材の水漬け作業」 が行われていたのではと考えられています。
栃の実は、縄文時代に生きていた人々にとって貴重な食糧資源であり、この時代から栃の実を食すための技術を持っていたことがわかります。

栃の効能

栃の実は食べるだけではなく、昔から薬用(民間療法)や、胃腸に有効な成分が含まれて いるということで漢方などにも活用されてきました。
その中でも効果があると作られてきたものをご紹介します。

栃の実の焼酎漬け(通称とち水)
ビンに入れた度数35度の焼酎を、栃の実の皮つきでそのまま、または割ったものを入れ ます。長期間そのままの状態にしておくと茶色い液になり使用できます。(この液は年 数を寝かせれば寝かせるほど効能があるといわれています。) それを患部に塗り込むと治 りが良くなるということです。

<効能>打ち身、ねんざ、肩こり、筋肉痛、虫刺され、かゆみ、湿疹、あせも 等

また栃の実には洗浄効果もあります。
水に栃の実を割ったものを漬けるとたくさんの泡がでます。それを洗剤の代わりに使用す ると綺麗になります。この出てくる泡は、栃の実に含まれるサポニンの泡です。

*サポニンとは
天然の界面活性剤です。
「サポ」は泡や、泡の立つものという意味があり、水を加えると発泡する性質があります。この泡は腸内 で宿便が解消して腸を綺麗にしてくれます。栃の実をそのまま食べると苦いのは、このサポニンを含んで いるためです。

栃の仲間

トチノキ属は世界に24種あり、アジア・ヨーロッパ・インド・北アメリカなどの北半球に 広く分布しています。
日本には1属1種「トチノキ」のみです。

◎セイヨウトチノキ(フランス語名:マロニエ) 原産:ヨーロッパ
セイヨウトチノキは、日本のトチノキと近縁種です。日本のトチノキとの違いは、葉が
やや小さく果実にトゲがあります。街路樹に多く使用され、有名な通りでもあるパリ の“シャンゼリゼ通り”には、このセイヨウトチノキが並んでいます。

◎アカバナトチノキ 原産:北米南部
樹高が3~10mほどで、他のトチノキの仲間と比べると背丈が低いです。濃い紅色の花 が咲きます。

◎ベニバナトチノキ 原産:交配種
上記のセイヨウトチノキとアカバナトチノキの交配によりできた欧州産の園芸種です。
日本のトチノキよりも葉が小さく樹高は9mほど、花の形はセイヨウトチノキとそっくり ですが、果実にトゲはありません。
花の色はピンクで、日本へは大正末年頃渡来しました。

~余談~
イギリスではマロニエが咲くころの日曜日を「チェスナット・サンデー」と呼び、日本の お花見のようにマロニエを見る習慣があります。ちなみにチェスナットというのは、日本 語に訳すと「栗」という意味があります。

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